日常の中の触手


作者名:
 更科(さらしな)



作者による紹介コメント:
 正美(まさみ)は名前も女みたいだけど、性格もちょっと頼りなかった。
 ところがある日、奇妙な石と接触してからなんだかワイルドになってきた。 なんか、少し見直した。
 見直した……けどッ! このおまけは何ッ?!
 腐れ縁のほんのりラブが、いきなり濃厚ドロドロに。
 そしてあたかも前からそこにあったかのように、日常の中に触手がある。
 その触手に弄ばれる、あたし。
 めまぐるしく変わる表面性状に、あたしの粘膜は息も絶え絶えだった……



ハイライト:
「な、なによ……」
 ちょっと狼狽するあたし。
 あんまりその匂いを嗅がされたら、ヘンな気分になりそう。
「まあ、見てろって」
 正美がすこし息を溜めたようにすると、触手の表面はビキビキと粟粒が浮いた
ようにイボイボになり、更にぐじゅぐじゅと粘液を滴らせはじめた。
 この形、どこかで見たような気がする……
 そうだ、腸だ!
 腸を表裏ひっくり返したら、きっとこんな不気味な肉の棒になる……

 表面から溢れた粘液は、長い糸を引いてボトボトとフローリングの床に垂れた。
 そしてクラッとするほど強烈な、あの匂いが辺りに拡がった。

 ドク! ドク! ドク! ドク! ドク! ドク! ドク!

 あたしの心臓の鼓動が、どんどん速くなる。
 あの匂いが、あたしの肺から血に溶ける……
 その血が脳に回ると、もう制御が効かなくなりそうだ……

「グロいもん…… 見せるな…… よォ……!」
 陶然とした顔で、心とは反対のことを無理に口走る。
「驚いた? なんか腸みてぇだろ? この触手の材料って、体の組織を構成する
ものを、目的外使用で自由に組み合わせられるような感じなんだ。だから木や石
や鉄のようには固く出来ないけど、一部分なら骨や歯くらいの固さになるぜ」

 講釈を聞き流しながら、目の前に浮いているぐちゅぐちゅした触手の先端に向
かって、引き寄せられるように舌を伸ばすあたし。
 ボーッとしていて、自分が何をしようとしているのか分からなくなっている。


アンソロジー参加者のコメント:

Simon    :

どこかとぼけたような日常から、いきなり快楽地獄に引きずり込まれて……濃厚 な描写に、目眩がしそうです。にしても正美君ってば、初めての女の子になんてこ とを(汗)

NOV.FALL  :

選び抜かれたことばと精密な筆致で、瞬く間に世界をフェティッシュかつ濃厚なエロスに包み込む流麗なイリュージョン。未知の快楽はいつだって、日常の小さな狭間に潜んでいる――。

玲・士方  :

おさななじみとの日常がくるりと、ふいに文字通り表裏逆転する瞬間、そこに見たこともないラブラブの凌辱 Hが! ‥‥求め奪われる被虐の世界に圧倒させられます。



作者紹介:
 ラブラブSMですとよくご自身が語られるとおり、更科氏の小説が持つ魅力はやはり、愛しあう男女が交わす アブノーマルなHの数々でしょう。
『初めてのお尻で感じちゃう』『浣腸した後、ウンチの始末なんかどうでもいい』といったご都合主義な小説が氾濫するなか、 ラバー・ボンテージ・SMなど現実のマニアの知識を丁寧にちりばめた更科氏の小説は、アナルセックスや貞操帯といったある種ファンタジックなプレイを、大胆に、 そして生々しいいやらしさで描きます。
 SMだって怖いものじゃない、むしろ身近で、アブノーマルだから気持ちイイ‥‥ラブラブSMも、そして時折つむがれる 凌辱系の残酷物語も、更科氏ならではのリズムと淫靡さに彩られています。

代表作は、

『アイツ』
『シンクロ』
『それを・越える・とき』

など。
更科氏のサイトはこちら。

『妖しい書庫』


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